3月の終わりまで、ちょっと好きな男の子がいた。
そばにいると、ふわっとした気持ちになった。
でも、異動やプロジェクトの終わりやらで彼に会えなくなると、私は彼のことを、きれいさっぱり忘れた。
たまに、とても嫌いだと思う男の子がいる。
私が彼を嫌いというより、彼が私を嫌い。たぶん生理的に、いやなんだ。私のことが。
どちらかというと、そっちのほうが残る。二度と会うことがなくなっても、全否定されたという負の記憶が、いやな感じで私に影を落とす。
好きだと思った気持ちは流れていくし、
嫌いだと思った気持ちも流れていく。
嫌われた記憶は、ほんの少しだけ残る。
あとに残るメインは、理想の私という魔人とのつきあい。
彼女は、誰からも嫌われないし、
彼女は、人生で最善の選択をし続ける。
ほんというと、最善とは何か、についての定義はなされてはいない。
ただ、彼女が即座に最善の選択をし続けるという結果だけがゆるぎない。
そんな魔人にふりまわされて、私は大事な何かを忘れ続ける。
魔人にかなわない私は悩み続ける。
自分だけがつらい気になる。
しかし、ふっと周りを見渡すと、みんなが悩んでいる。
ねえ、たとえば、みんな、ほんとうに人間が好きなんですか?
そうでもないでしょう?
子供のころに習った正しいたわごとを、いまだに信じている大人は悩んでいる。
信じていない大人も悩んでいる。