他人に勝つことに夢中になる人は出世する。
他人より良い収入、他人より良い家、他人より良い服、他人より良い食べ物、他人から幸せに見える家族……と、その評価基準は明確である。勝つために、他人と仲良くして、他人を見て、観察して、情報収集して、他人という大きなグループの中で上を目指す。
自分に勝つことに夢中になる人は、出世できるのかな。微妙だと思う。
評価基準はきわめてあいまい。収入・家・服・食べ物といった一般的な評価基準のことは見下すか興味がないかのどちらか。とにかく自分に勝てればいいのだから、こころざしは決して高くない。
そのくせ、他人に負けたくないという気持ちだけはある。褒められると悪い気はしない。出世している人のことも妬む。なぜあんな人が世間から評価されて、自分は評価されないのか、と。
しかし自分の外側の世界の人からすれば、評価のしようがない。
他人に勝つことより、自分に勝つことを選んだことからくる、あたりまえの帰結。
芸術、発明、学問、といった何かを生み出す人たちだって例外ではない。
出世したいんだったら、ただ自分と戦っているだけじゃ、だめなんだ。