初めて死にたいと思ったのが、5才になるより前であることは確かだ
初めて自殺しようとしたのが、5才の時だから
縄跳びの縄を手に持って
幼稚園の中を歩きまわり
誰にも見つからない部屋を探した
見つけた
中に入っていき
縄を自分の首に巻きつけて、両サイドへ引っ張った
首がぎゅうぎゅう絞まるのを感じたが、ちゅうちょしなかった
とにかく死ぬのだという結論が先にあった
顔が膨らんで、皮膚の表面がぴりぴりと痺れていく感覚を、私は今でも鮮明に覚えている
ぱんぱんに膨らんで、割れそうになっている風船を、5才の私は連想していた
死ぬのだ、死ぬのだ、死ぬのだ
本当に死んでしまって、意識がなくなるまで、腕の力をゆるめる気はなかった
その先の記憶を、私は持っていない
幼なじみによると、私は先生に見つかり、お仕置き、とばかりに物置に閉じ込められていたそうだ
長いあいだ、私の中に、よくわからない風景の記憶があった。薄暗い物置の中で、棚に並んだダンボール箱が、午後の光を浴びている風景。――それが、その時の物置。そうして記憶がつながった
別に、5才の私が、特別に不幸だったわけじゃない
親は普通、兄弟も普通、普通の家庭の子
ただ、ちょっとでも嫌なことが続くと、私はすぐに死にたくなった
その時は、1つ年上のいじめっこタイプの男の子が私に目をつけていて、私の嫌がることを言いにきたり、私のスカートをまくったりとか、そういうのが続いていた
たったそれだけ
暴力をふるわれたとか、いじめられたりとか、そんなんじゃない。ただ、なんか、苦痛だった。それだけのことで、私は、自分の人生を捨ててしまう気になった。それで全然かまわかなった
生きることは快楽ですか
苦痛でしょう?
それは私が幼い頃から背負う真理
誰だって、知っているはずの真理
でも、なんか、きっと、私の場合は違うんだ