人の目を見てしゃべることに、初めて違和感を覚えたのは12才の時。
それまでの自分が、他人の顔のどこを見て、何をしゃべっていたのか、急にわからなくなった。
何も見ていなかったのかもれない。
他人の気持ちなどおかまいなして、見たいものだけ見た気分になっていたのだろう。
いずれにしても、そこからは新しい人生の始まりだった。
私の視界に、多数の他者が出現した。
人間の性根の浅さを悟ったのは、17才の時。
引き金は、すごく他愛のないこと。女友達のエゴと思いやりのなさによって、私が待ちぼうけをくらわされた。私が炎天下のビルの影で彼女たちを待っている間、彼女たちはめいめいの自宅でのんびりとテレビでも見て過ごしていたのかと思うと、腹が立った。
私は、彼女たちが急に嫌いになった。思い起こせば彼女たちは、最初からエゴイストで思慮が浅かった。見た目がかわいいし、おもしろいから、私は彼女たちと仲良くしたいと思ったけれど、でもやっぱりいらなくなった。
気がつけば、私の周りは、彼女たちに似た人たちであふれていた。鈍感でエゴイストで思慮の浅い人たちばかり。私は、友達を作らねばならないという先入観に突き動かされて、みんなと仲良くしていただけ。醒めた目つきで、客観的に彼女たちという人間を評価してみるに、ろくでもない、くだらない人間ばかりだった。
唯一、心の底から、この人は好きだと思える女の人がいた。
美人で、大人で、頭が良くて、悪女だった。私より1つ年上なだけなのに、遠かった。私の憧れの女性だった。大好きだった。ーー私が17才だった時は。
1年後に、彼女に対する気持ちは醒めた。彼女は、ろくに勉強をしなかったせいで、どの大学にも合格できずにプーになった。幻滅だった。私は急に、彼女と会いたいと思わなくなった。
彼女のことは、私は嫌いにはならない。
ただ、私が求めるものは、この世には存在しえないものなのかもしれないと思った。
私のほうは、ちゃんと一流大学に入学した。
でもそこには、ろくな人間がいなかった。
体裁を整えるために友達は作ったけれど、ただそれだけだった。
合コンやノートの貸し借りのために、私には友達が必要だった。ただそれだけだった。私は彼女たちのことが特に好きではなく、彼女たちも心の底では私のことが別に好きではなかった。
私はずっと孤独だった。
いつだって孤独だ。
でも、助けて、と手を伸ばす相手がみつからない。