私は、生身の人間に対する情や好奇心に欠けている。
結婚してから、人と会うのが、ものすごく億劫になった。
心の中に巣食う強烈な孤独感を、新たに家族となった人が埋めてくれるのであれば、わざわざ新しい人を求めて外に向かって手を伸ばす必要はなかった。
それまでの仕事は辞めた。独立して、働く時間をすごく減らした。
で、小説を書いた。
名作を書きたいというのが、16才の時からの夢だった。
小説家になりたいと思ったことはないし、文学部へ行こうと思ったこともない。ちまたに流通する小説にも、あまり興味はない。
ただ、私はいつか、小説を書くようになると思っていて、そして、その時がやってきた。それまでは何度挑戦してみても、短編小説すら書き上げられなかったのが、急にすらすら書き進められるようになった。
猫を飼うようになった。
動物にも、人間と同様に個性や感情があることを肌で感じるようになると、ますます人間が嫌いになった。
私は毛皮を嫌悪するようになった。食肉を嫌悪するようになった。鶏肉だけは、滋養のために少し食べてしまうけれど、牛と豚は口にしなくなった。グルメ番組は嫌いです。畜産業者もペット流通業者も嫌いです。
人と会う機会が激減した。
私の周囲から、人がかき消すようにいなくなった。
次々と新しい人がやってきて、次々と古い人が去っていく。
それが、独身時代の私のスタイル。
新しい人がやってこないのだから、人々は去っていくばかり。
そして、私には、夫と猫しかいなくなった。
古い友人たちと、細く長く温かくつきあい続ける人たちを見ると、私は強烈に寂しくなる。
でも、私は、なんか、無理なんだ。
むしろ割り切ったほうがいいのかな。
私は、自分から始まる自分の家族だけを大切にします。
他は、あんまり興味がないです。
なんて。